特許法の八衢

パラメータ発明について先使用権の成立を緩やかに認めた事案 ― 知財高判令和6年4月25日(令和3年(ネ)第10086号) ―

1. はじめに

本判決 知財高判令和6年4月25日(令和3年(ネ)第10086号)は、様々な争点があるが、最も重要なのは、先使用権の成否についての判示である。このことは、知財高裁ウェブページで掲載されている本判決の要旨*1からも窺える。

原判決である大阪地判令和3年9月16日(平成29年(ワ)第1390号)も、緩やかに先使用権の成立を認めるものとして注目されていた*2が、本判決も、原判決を修正・補充しつつ、同様に先使用権の成立を認めている。知財高裁がこのような判断したことは、実務上、大きな意義がある。

以下、本判決を紹介するとともに、雑感を述べる。

2. 本件発明1-1*3

光拡散部を有する長尺状の筐体と、
前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数のLEDチップと、を備えたランプであって、
前記複数のLEDチップの各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記LEDチップの発光中心間隔をx(mm)とすると、
y≧1.09xの関係を満たす、
ランプ。

3. 本判決*4

3.1 本件発明について

……本件各発明1[引用者注:本件特許1の請求項1、3、14、16及び17に係る発明]は、次のようなものと認められる。

LEDランプでは、LEDモジュールが筐体内に収納され、当該LEDモジュールは、一定間隔で並べられた複数のLED(LED素子やベアチップ)を有するところ、従来、LEDの並び方向に沿って発光輝度の高い領域(LEDが実装された部分)と発光輝度の低い領域(LEDが実装されていない部分)とが繰り返して現れ、筐体を透過するLEDの光に輝度差が生じるので、ユーザに光の粒々感を与えるという問題があり、特に、直管形LEDランプでは、ユーザは一層粒々感を感じる傾向にある(……)。

この課題に対して、ランプの光拡散性を高めれば粒々感を解消することは自明であるが、その副作用として光束が低下してしまい、ランプ照度が低下してしまう。そのため、光束低下を最小限に抑えた上で粒々感を抑制することが重要となるが、従来、(1)粒々感の定義があいまいで数値化されておらず、ランプ設計にフィードバックすることが非常に困難であったこと、(2)粒々感に影響を与えるランプの構造として、光源素子の間隔や筐体(チューブ)の素材、あるいは光源素子から筐体までの距離等が多種多様であること、すなわち、粒々感に影響を及ぼし得るパラメータが非常に多い中で、光束低下を必要最小限に抑えて粒々感を抑制することが極めて困難であった(……)。

本件各発明1は、光拡散部を有する長尺状の筐体と、前記筐体の長尺方向に沿って前記筐体内に配置された複数の発光素子とを備えたランプであって、前記複数の発光素子の各々の光が前記ランプの最外郭を透過したときに得られる輝度分布の半値幅をy(mm)とし、隣り合う前記発光素子の発光中心間隔をx(mm)とすると、yとxが所定の関係を満たすものであり(……)、光束低下を最小限に抑えて効果的に粒々感を抑制することのできる画一的な領域を見いだすとともに、その領域を数値化することに成功したもの、すなわち、ランプ最外郭から発せられる光源一つの輝度分布をパラメータとして採用することで、輝度均斉度との関係で粒々感を定量化することができるという知見……を得てできたもので(……)、……y≧1.09xの関係を満たすランプ(……)である。

本件各発明1によると、ユーザが感じられないまでに粒々感を抑制することのできるランプ及び照明装置を実現することができる(……)。

本件明細書で1は[引用者注:判決文ママ]、輝度均斉度が目標とする85%、90%、95%が得られる場合のLED1個の輝度分布における半値幅y(mm)(……)と隣り合うLEDの発光中心間隔x(mm)(……)を実測し、その結果(……)から、y=αxとの直線近似を行った(回帰式を得た)もの(以下「本件パラメータ」という。)であるところ(……)、このように、二つの測定データから、直線近似式(回帰式)を得ることは周知の技術的事項であるといえる(……)。

……

本件各発明1は、「ランプ」又は「照明装置」に係る発明であって、「物」の発明である。そして、「物」の発明である本件各発明1において、近似式y=αxからなる本件に係るパラメータにおいて、αがとり得る値の範囲を特定するものである。

そうすると、新規性又は進歩性の判断に際しての発明の要旨認定の場面では、y値及びx値(の測定結果)が、各請求項で特定されているy=αxの関係におけるαの範囲内である物を全て含み、これはy値又はx値の具体的な数値のいかんやy値又はx値の設計方法を問わないものと解するのが相当である。

なお、控訴人PIPMは、所望の輝度均斉度を得るために、y/x値に着目するとカットアンドトライを要せず簡易的に検証可能である(……)とし、物の発明において、物の製造方法で特定しているかのような主張をしているが、仮に物の製造方法で特定しているとしても、物の発明を製造方法に限定して解釈する必然性はなく、これと製造方法は異なるが物としては同一であるものも当該特許発明に包含されると解するのが相当である。

……

本件各発明1に係るパラメータは、統計的に推定された近似式であり、このような式から導出される数値は予測値であること、また、予測値と実測データとの差は「残差」と呼ばれ、決定係数(本件の「相関係数」)が、1に近いほど分析の精度(予測値の精度)が高いものであることは、技術常識である(……)。……。

ただし、近似式は、あくまでも統計的に推定されたものであるから、高い相関性がある本件パラメータ(近似式)を満たす場合でも、目標とする輝度均斉度が厳密に達成できるものではない。

……

このように、本件パラメータは、その特定されるy/x値を満たす場合であっても、輝度均斉度の目標値に近い値を達成できる(目標値を下回ることもあれば、上回ることもある)ということを意味するにすぎない。

……

そもそも各輝度均斉度の目標値についても、この目標値の前後において、「粒々感」に係る光学的な効果が大きく変化するような臨界的な意義を持つものでもなく、本件パラメータによって、目標とする輝度均斉度がおおよそ得られることが期待できれば十分であると理解できる。

3.2 先使用権の成否

事案に鑑み、まず、403W製品に基づく先使用権の成否(……)について、原判決の判断及びこれに対する当事者の主張するところをも踏まえて当裁判所の判断を示す。

……認定事実を総合考慮すると、被控訴人は、遅くとも本件優先日1[引用者注:本件特許権1の優先日]である平成24年4月25日以前に、403W発明[引用者注:判決において「RAD-403W(以下「403W製品」という。)に係る発明(以下「403W発明」という。)」と定義されている。原判決も同様]の実施である事業をしていたことが認められる。

……

……403W発明は、本件各発明1並びに本件訂正発明1-17及び1-18の構成要件を充足する構成を備えたものであると認められる。

特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する(特許法79条)。

上記のとおり、先使用権者は、「その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において」特許権につき通常実施権を有するものとされるが、ここにいう「実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内」とは、特許発明の特許出願の際(優先権主張日)に先使用権者が現に日本国内において実施又は準備していた実施形式だけでなく、これに具現されている技術的思想、すなわち発明の範囲をいうものであり、したがって、先使用権の効力は、特許出願の際(優先権主張日)に先使用権者が現に実施又は準備をしていた実施形式だけでなく、これに具現された発明と同一性を失わない範囲内において変更した実施形式にも及ぶものと解するのが相当である(最高裁昭和61年(オ)第454号同年10月3日第二小法廷判決・民集40巻6号1068頁参照)。

そして、先使用権制度の趣旨が、主として特許権者と先使用権者との公平を図ることにあり、特許出願の際(優先権主張日)に先使用権者が現に実施又は準備をしていた実施形式以外に変更することを一切認めないのは、先使用権者にとって酷であって相当ではなく、先使用権者が自己のものとして支配していた発明の範囲において先使用権を認めることが同条の文理にも沿うと考えられること(前記最高裁判決参照)からすると、実施形式において具現された発明を認定するに当たっては、当該発明の具体的な技術内容だけでなく、当該発明に至った具体的な経過等を踏まえつつ、当該技術分野における本件特許発明の特許出願当時(優先権主張日当時)の技術水準や技術常識を踏まえて、判断するのが相当である。

……工業製品にあっては、同一生産工程で生産されても、その品質はさまざまな原因によってばらつきが存在するものであり、照明器具においても同様のことがいえると解されるところ、……、被控訴人403W製品においても、それぞれ数値範囲にばらつきが生じているものと理解できる。また、品質管理の手法としては、製品の検査結果を要求される品質標準と比較して、この差(製造誤差)を標準偏差の3倍(3σ)の範囲に収めることが一般的に採用される手法の一つであると理解できる(……)。これらを踏まえると、被控訴人403W製品のy/x値は、実測値で1.27~1.38程度、一般的な製造誤差を考慮した場合である3σは、403W製品に要求される品質標準は不明であるものの、一般的な管理手法に照らせば、実測された平均値がそれに該当するといえ、被控訴人403W製品のy/x値は、おおむね1.27~1.40程度であったと認めることができる。

また、先使用権に係る実施品である403W製品は、本件優先日1前において公然実施されていた402W製品とシリーズ品を構成する(……)から、被控訴人402W製品と極めて関連性が高い公然実施品である。

そして、403W製品は、402W製品と共通のカバー部材を採用しつつ(……)、402W製品と比べると、LEDの個数を減らしつつも「粒々感の解消」を図った超エコノミータイプとの位置づけであった(……)。すなわち、403W製品は、402W製品との比較でいえば、y値(半値幅)を固定して、x値(LEDチップの配列ピッチ)を工夫しつつ、本件各発明1と同様の課題である粒々感を抑えている(所定の輝度均斉度を得ている)ものと理解できる(……)。

ここで、証拠(……)によると、カナデンに納品された402W製品のy/x値は1.7程度であり、その余の402W製品のy/x値は更に大きいこと(……)が認められる。

また、証拠(……)によると、平成23年6月に被控訴人が発売した「THF72L」や「LEDZ TUBEシリーズ(RAD-402など)」は、粒々感のない光源の実現のため、所定の明るさにする制約からX値が決まり、電源内蔵型LED(型番RAD)では、電源を内蔵するためLEDとカバー部材の間隔を大きく取れない制約があるため、数種類のカバー部材を用意して粒々感を目視評価して、カバーを選定していたものであり、「LEDZ LシリーズSLIM TUBE MODULE」は、x値16mm、y値26.2mm y/x値1.64であったことが認められる。

以上のことを踏まえると、403W製品に具現化された発明であるy/x値が1.4を超える部分から1.7又は1.7を超える範囲は、被控訴人においてx値を適宜調整することで実現していた範囲であって自己のものとして支配していた範囲であるといえる。

さらに、本件各発明1の課題であるLED照明の粒々感を抑えることは、LED照明の当業者において本件優先権主張日前から知られた課題であり、当業者はこのような課題につき、本件パラメータを用いずに、試行錯誤を通じて、粒々感のない照明器具を製造していたものといえる。そのような技術状況からすると、「物」の発明の特定事項として数式が用いられている場合には、出願(優先権主張日)前において実施していた製品又は実施の準備をしている製品が、後に出願され権利化された発明の特定する数式によって画定される技術的範囲内に包含されることがあり得るところであり、被控訴人が本件パラメータを認識していなかったことをもって、先使用権の成立を否定すべきではない。

そこで、本件優先日1当時の技術水準や技術常識等についてみると、……、輝度均斉度が85%程度を上回ることで粒々感に対処できることが周知技術(……)であったこと、y/x値が1.208~1.278程度のクラーテ製品②が、本件優先日1前に公然実施されていたこと、403W製品は、402W製品と比較して、LEDの個数を減らす設計によるものであって、本件各発明1と同様の課題である粒々感を抑えることができる範囲内でx値を402W製品より大きくし、y/x値を輝度均斉度が85%程度となる1.1程度まで小さくすることは、402W製品を起点とした403W製品の設計に至る間の延長線上にあるといえる。以上のことからすると、y/x値が1.27~1.1を満たす製品を設計することは、403W製品によって具現された発明と同一性を失わない範囲内において変更した実施形式というべきである。

以上のとおり、被控訴人403W製品に具現されたy/x値との同一の範囲は、1.27~1.40と認定でき、また、被控訴人403W発明に具現された発明と同一性を失わない範囲は、1.1~1.7又は1.7を超える範囲と認定できるから、1.1~1.7又は1.7を超える範囲は、先使用権者である被控訴人が自己のものとして支配していた範囲と認められる。

控訴人PIPMは、本件各訂正発明1は、オールインワンのパラメータとして、y値、更にはy/xの値を評価することで、非常にシンプルなアプローチで、輝度均斉度を制御することを実現しているとの本件発明1の技術的思想を前提とした主張をするが、前記……のとおり、y/x値に関して如何なる設計手法を取るかは、本件発明の技術的範囲とは無関係であり、先使用による通常実施権の判断において、403W製品が、控訴人PIPMがいう本件パラメータに係る技術思想を備える必要はない。かえって公然実施されているような数値範囲を事後的に包含する本件パラメータについては、公平の観点から、特許権の行使が及ばないと解するのが相当である。

以上によると、被控訴人は、本件各発明1並びに本件訂正発明1-17及び1-18の内容を知らないで自らこれらに含まれる403W発明をし、本件優先日1の際に、日本国内において、その発明の実施である事業をしている者と認められる。

したがって、被控訴人は、403W発明及び上記事業の範囲内において、本件各発明1並びに本件訂正発明1-17及び1-18に係る特許権について、通常実施権を有する。

また、403W製品は、x値及びy値の関係性を特定する技術的思想が明示的ないし具体的にうかがわれるものではないものの、実際にはそのx値及びy値の関係性により、本件各発明1並びに本件訂正発明1-17及び1-18に係る構成要件に相当する構成を有し、その作用効果を生じさせている。加えて、403W発明につき、照明器具としての機能を維持したまま、本件各発明1並びに本件訂正発明1-17及び1-18の特定するx値及びy値の関係性を満たす数値範囲に設計変更することは可能と認められる。このため、被控訴人製品1~5及び7~16は、いずれも、403W発明と同一性を失わない範囲内において変更した実施形式であるにとどまるものといえる。

そして、控訴人PIPM及び被控訴人が測定した被控訴人製品1~5及び7~16のy/xの値は……いずれの値についても、前記……の被控訴人403W発明に具現された発明と同一性を失わない範囲に含まれているものといえる。

そうすると、被控訴人による被控訴人製品1~5及び7~16の製造販売は、被控訴人の上記通常実施権の及ぶ範囲内に含まれる。

以上のとおり、被控訴人は、403W発明に基づく上記通常実施権により、業として被控訴人製品1~5及び7~16を製造販売し得ることから、その余の点につき論ずるまでもなく、控訴人PIPMは、被控訴人に対し、本件各発明1並びに本件訂正発明1-17及び1-18に係る本件特許権1を行使し得ない。

4. 雑感

まず、「本件パラメータは、その特定されるy/x値を満たす場合であっても、輝度均斉度の目標値に近い値を達成できる(目標値を下回ることもあれば、上回ることもある)ということを意味するにすぎない。」といった判示から窺えるように、知財高裁は、本件発明の「本件パラメータ」について、技術的意義が大きいものだとは考えていないのであろう。このような特許発明であることも、先使用権が緩やかに認められた理由の一つであると思われる。

ついで、「403W発明は、本件各発明1並びに本件訂正発明1-17及び1-18の構成要件を充足する構成を備えたものであると認められる。」という判示は、79条の「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし」に対応するものであろう。すなわち、先使用発明(403W発明)は、「その発明」=「特許出願に係る発明」と認められる旨を述べているのだろう。ここで重要なのは、原判決では、「403W発明は,本件各発明1並びに本件訂正発明1-17及び1-18の構成要件を充足する構成を備えたものであり,これらの各発明と同一性が認められる。」と発明の同一性にまで言及していた一方、本判決では、発明の同一性については述べておらず、構成要件充足性のみの言及に止めている点である。本判決は、先使用権の成立に、発明の同一性までは要求していない、と解されよう。

また、原判決では理由付けが不十分であった、先使用製品からの実施形式の変更について*5、本判決では、まず、ウォーキングビーム事件最判の「先使用権者が自己のものとして支配していた発明の範囲」というフレーズから、「実施形式において具現された発明を認定するに当たっては、当該発明の具体的な技術内容だけでなく、当該発明に至った具体的な経過等を踏まえつつ、当該技術分野における本件特許発明の特許出願当時(優先権主張日当時)の技術水準や技術常識を踏まえて、判断するのが相当である。」との解釈を導いた後、本件発明の解決しようとする課題が優先日前から知られていたことも踏まえ、それなりの理由付けをもって、(先使用製品と同一ではないものを含む)被疑侵害製品が先使用権の範囲にある、との結論を導いている。

さらに、「出願(優先権主張日)前において実施していた製品又は実施の準備をしている製品が、後に出願され権利化された発明の特定する数式によって画定される技術的範囲内に包含されることがあり得るところであり、被控訴人が本件パラメータを認識していなかったことをもって、先使用権の成立を否定すべきではない。」「公然実施されているような数値範囲を事後的に包含する本件パラメータについては、公平の観点から、特許権の行使が及ばないと解するのが相当である。」といった判示は、パラメータ発明に関する特許権の“乱造”に対する産業界の不安に答えたものとして評価できよう。

ところで、前述した「403W発明は、本件各発明1……の構成要件を充足する構成を備えたものであると認められる。」という判示からすると、逆に、先使用製品が特許発明の構成要件を充足しない場合は、先使用権の成立が否定される(いわゆる「食い込み」は認められない)と読めなくもない。しかし、「先使用権者が自己のものとして支配していた発明の範囲」という観点からは、たとえ先使用製品はクレーム外にあっても、その先使用製品に具現化された発明はクレームに食い込んでいる場合もあり得、本判決が「食い込み」を否定したとは言えないだろう。

最後に、本判決では「403W製品に具現化された発明」と「403W発明に具現された発明」とが混在しているが、両者に違いはあるのだろうか。「403W製品」と「403W発明」との相違が、一部不明瞭なように思われる。

更新履歴

  • 2024-06-04 公開

*1:「要旨については,重要な法律上の判断を含む事件や,審決を取り消し,又は原判決を変更し又は取り消した事件などについてのみ掲載」されるところ、本件は控訴棄却にも拘わらず要旨が掲載されているため、「重要な法律上の判断を含む事件」と判断されたのであろう。

*2:例えば、吉田広志「実施促進説から解釈する先使用制度の現代的な意義-特に用途発明、パラメータ発明からパブリック・ドメインを保護するために-」『令和4年度知的財産に関する日中共同研究調査報告書』(2023,法人知的財産研究教育財団)117頁。

*3:本件特許1の請求項1に係る発明。本件では他の特許発明も扱われたが代表として挙げる。強調は引用者による。

*4:強調は引用者による。

*5:原判決では「403W発明につき,照明器具としての機能を維持したまま,本件各発明1並びに本件訂正発明1-17及び1-18の特定するx値及びy値の関係性を充たす数値範囲に設計変更することは可能と思われる。このため,被告製品1~5及び7~16は,いずれも,403W発明と同一性を失わない範囲内において変更した実施形式であるにとどまるものといえる。」とだけ述べている。