特許法の八衢

進歩性(非自明性)

自明性の基礎とできる先行技術について判示された事案 ― Netflix v. DivX (Fed. Cir. 2023)

はじめに 本訴訟の対象となったは、マルチメディアファイルのデコーダ・エンコーダに関する特許権(権利者はDivX, LLC)である。Netflix, Inc.らは、IPRを請求し、本件特許発明は複数の先行技術文献(に記載された発明)の組み合わせにより自明であり、本件…

独立要件説 v. 二次的考慮説 ― 議論の実益

田村善之「「進歩性」(非容易推考性)要件の意義:顕著な効果の取扱い」パテント69巻5号(別冊15号)(2016)5頁以下には、進歩性判断において独立要件説を採るか、二次的考慮説を採るかにより、結論が異なる(可能性のある)3つの場面が示されている。これらに…

効果の『非予測性』および『顕著性』

はじめに 最高裁判決 最三小判令和元年8月27日集民262号51頁(平成30年(行ヒ)第69号)には、次の判示がある。「原審は,結局のところ,本件各発明の効果,取り分けその程度が,予測できない顕著なものであるかについて,優先日当時本件各発明の構成が奏する…

発明の予測できない顕著な効果の有無の判断において、「顕著性」に加え「非予測性」を検討する意義

発明の予測できない顕著な効果について判断した、最高裁判決最三小判令和元年8月27日集民262号51頁(平成30年(行ヒ)第69号)には、次の判示がある。「原審は,結局のところ,本件各発明の効果,取り分けその程度が,予測できない顕著なものであるかについて…

続続・最高裁は効果の独立要件説を採ったのか?

最三小判令和元年8月27日集民262号51頁(平成30年(行ヒ)第69号)は民集に登載されないため、いわゆる調査官解説は出ないものと考えていたところ、Law & Technology 87号に、大寄麻代最高裁調査官による本判決の「解説」(以下、本調査官解説)が掲載された*1…

続・最高裁は効果の独立要件説を採ったのか?

はじめに 飯島歩弁護士の「進歩性判断における予測できない顕著な効果の位置付けに関するドキセピン誘導体含有局所的眼科用処方物事件最高裁判決について」という論考(以下、飯島最判判批と称する)が公表された。そこでは次のように、本最高裁判決(最三小…

最三小判令和元年8月27日(平成30年(行ヒ)第69号)後の差戻審についての覚書

最三小判令和元年8月27日(平成30年(行ヒ)第69号)を受けて、差戻審では、新たな手法により効果顕著性を判断することとなるところ、最終的に出される結論は(和解を除くと)次の3通りだろう: 効果顕著性の存在を認めず、進歩性否定 効果顕著性の存在を認め…

最高裁は効果の独立要件説を採ったのか?

はじめに 最三小判令和元年8月27日(平成30年(行ヒ)第69号)において、最高裁は、進歩性判断での発明の効果の取り扱いにつき(「二次的考慮説」ではなく)「独立要件説」を採ったという見解がある*1 *2。しかし、私には、最高裁が独立要件説を採ったとは感じ…

プロパテントへの揺り戻しか?―PersonalWeb Technologies, LLC v. Apple Inc. (Fed. Cir. 2017)

本事件は、特許権者である原告が、IPRにおいて、対象特許発明が2つの先行技術文献の組み合わせから自明であると判断されたことを不服として、CAFCに上訴したものである。本判決で、裁判体*1は、PTABのクレーム解釈は是認したが、非自明性については、 2つの…